AMDが誇る技術の結晶がここに!驚愕の性能向上を実現した、第4世代 AMD EPYC™ プロセッサーの実態とは?

AMD EPYC™ プロセッサー

2022-12-23更新

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2022年10月10日、AMDは第4世代 AMD EPYC™ プロセッサーである、AMD EPYC™ 9004 シリーズ・プロセッサー、開発コードネーム“Genoa”を発表しました。第4世代 AMD EPYC™ プロセッサーはデータセンター向けのCPUで、最新のCPUコアZen4を搭載しており、前世代と比べて大幅な性能の向上がはかられています。業界内で一歩先を行く第4世代 AMD EPYC™ プロセッサーとは一体どのような製品なのか、ソリューション・アーキテクトの中村 正澄が解説します。

日本AMD株式会社
データセンター・エンベデッド・ソリューション営業本部
ソリューション・アーキテクト
中村 正澄

製造プロセス5nmの採用により最大96個のCPUコアを搭載

第4世代 AMD EPYC™ プロセッサーの特徴としてまず挙げられるのは、なんといっても最大96のCPUコアの集積を実現した点です。第3世代 AMD EPYC™ プロセッサーは最大64であることを考えると、実に1.5倍の増加ということになります。それを可能にしたのは、5nmという新たな製造プロセスへの移行でした。業界を見渡すと製造プロセスは7nmが主流となりつつありますが、第4世代 AMD EPYC™ プロセッサーはすでにその一歩先を行くプロセス・テクノロジーが採用されているのです。

第4世代 EPYC™ の特徴

第4世代 AMD EPYC™ プロセッサーは、コア数の増加によって演算能力が向上しただけでなく、I/Oとメモリについても増強が行われています。I/OはPCI-Express 5.0に進化し、さらにCXLメモリのプロトコルをサポートしました。I/Oはバンド幅が第3世代 AMD EPYC™ プロセッサーの2倍、メモリはDDR5という新たなテクノロジーの採用とチャンネル数を12チャンネルに増やしたことにより、第3世代 AMD EPYC™ プロセッサーの 2.25倍のバンド幅に増強されました。これらリソースの大幅な増強によって、第4世代 AMD EPYC™ プロセッサーは第3世代と比べて約90%増という高い性能の向上を実現しました。

JAVAの性能指標の1つ、SPECrate 2015 Multi-JVM max jOPS ベンチマークの結果

ここまで大幅な性能の向上は、これまでのAMDの歴史の中でも最大級で、競合の現行製品だけでなく、今後リリースが予想される新製品に対しても優位性を保てると確信しています。現に AMD EPYC™ プロセッサーは300以上のベンチマークで世界第1位を獲得しており、今後しばらくこの地位は揺るがないはずです。

EPYCプロセッサーは300以上のベンチマークで世界第1位を更新

他を圧倒するマイクロアーキテクチャZen 4の実力

これだけ大幅な性能向上の背景には、マイクロアーキテクチャZen 4の他を圧倒する機能の高さがあります。Zen 4では、キャッシュ階層や分岐予測の改善など細かな性能向上を積み重ね、結果としてZen 3と比較して約14%のIPC (Instruction-per-Clock)の向上を実現しています。

第3世代 AMD EPYC™ プロセッサーから約14% 同クロックあたりの処理できる命令数が向上

Zen 4の性能向上において大きい役割を果たしている機能のひとつが、新たに採用されたAVX-512命令です。これは512ビットのデータをひとつの命令で処理できるSIMD命令セットです。AMD EPYC™ プロセッサーの特徴としては512ビットのデータを256ビットのデーターパスで処理する点です。これによりチップ面積に影響を与えることなく、また動作周波数が下がってしまうことを避けることができました。このAVX-512命令の採用によって、NLP(自然言語処理)、イメージ分類(文字認証)、そして物体検出のスループットが大幅に向上しています。また、BFloat16やVNNIといった、AIやディープラーニングで使われる命令セットもサポートしています。

AVX-512命令の採用によって、NLP(自然言語処理)、イメージ分類(文字認証)、そして物体検出のスループットが大幅に向上

そしてなにより注目すべきは、7nmと比較して約2倍の集積度となる製造プロセス5nmの採用によって、チップの面積を3.84㎟のサイズに収めている点です。サイズが小さくなることで製造コストと消費エネルギーも大幅に下げられるため、第4世代 AMD EPYC™ プロセッサーは、性能も向上しながら消費電力も減らせる、相反する効果を実現したプロセッサーであると言えます。

性能を向上させながら消費電力も削減

第4世代 AMD EPYC™ プロセッサーの省エネルギー性能についてもう少し掘り下げると、仮に約2000台の仮想マシンを構築する場合に必要なサーバー台数を見積もった場合、第4世代 AMD EPYC™ プロセッサーはサーバー5台で約2,000台の仮想サーバーを動作させることができます。競合製品の場合、同台数の仮想サーバーを動かすには15台のサーバーが必要なため、比較すると3分の1の台数で済むということになります。サーバーの台数を削減できることで、消費電力もそれに比例して減らすことができますし、導入コストも運用コストも削減できるのです。

競合製品に比べ3分の1のサーバー台数で同数の仮想サーバーを稼働

詳細は、以下URLを参照(※リンク先は英語)https://www.amd.com/en/claims/epyc4#SP5TCO-019A

第4世代 AMD EPYC™ プロセッサーはプロセッサー単体の消費電力が増加しているので誤解されやすいが、省電力以上に性能が向上しているため、前世代の第3世代 AMD EPYC™ プロセッサーよりもグリーンなCプロセッサーになっています。

実は身近なところで活躍する AMD EPYC™ プロセッサー・シリーズ

AMD EPYC™ プロセッサーはこれまでも幅広い業界やサービスで採用されており、実は生活の身近なところでも活躍していることはあまり知られていないかもしれません。例えば自動車業界。国内外の大手自動車メーカーのほとんどが AMD EPYC™ プロセッサー・シリーズを採用しており、メルセデス AMG ペトロナス F1 チームの空気抵抗の計算分析に利用されているのは AMD EPYC™ プロセッサーです。

■導入事例
【AMG PETRONAS FORMULA ONE TEAM】メルセデス AMG ペトロナス F1 チーム、AMD EPYC™ CPU でポールポジションを獲得
https://biz.amd-heroes.jp/products/epyc/1957

また、ローカルな天気予報局の気象予測やMicrosoft Office、いまやテレワークで欠かせない各種リモートコミュニケーションサービスの提供においても、 AMD EPYC™ プロセッサーの採用が進められています。さらにAMDはメガデータセンターであるAWSやMetaとは将来の開発に向けたパートナー契約を結んでいますので、今後予想されるメタバースをはじめとした近未来のデジタルサービスの展開にあたり、 AMD EPYC™ プロセッサーが大いに力を発揮することになるでしょう。

今後ラインナップを充実、さらに次世代のCPUもリリース予定

2023年にかけて第4世代 AMD EPYC™ プロセッサーはそのラインナップを充実させ、さらにハイスペックな製品のリリースも計画されています。今回発売されたプロセッサー、開発コード名“Genoa”に続いて、クラウドに特化した”Bergamo”、さらにハイパフォーマンス・コンピューティングに最適な”Genoa-X”、エッジ・コンピューティングやテレコミュニケーションをターゲットにした“Siena”と第4世代プロセッサー製品の発売を予定しており、2023年中にはシリーズすべてが出揃う予定です。

今後のリリース予定

そしてすでにAMDのエンジニアは次世代CPUの開発に着手しており、第5世代 AMD EPYC™ プロセッサー“Turin”の開発を進めています。AMDは第4世代 AMD EPYC™ プロセッサーのラインナップを含めた、この長期開発計画を確実に進められるように注意を払っています。

特にサーバーのようなインフラ、エンタープライズの製品の導入は計画的に導入を進められるものですから、それを支えるCPUの製品リリースのスケジュールを守ることはとても重要だとAMDは考えています。業界内でチャレンジャーの立場にいるAMDにとってスケジュール通りに製品を発売することは、ユーザーの要望に着実にお応えし、信頼していただくための大切な戦略です。

AMDはスケジュール通りに製品をリリースすることに信念を持つ

ここまで見てきたとおり、第4世代 AMD EPYC™ プロセッサーはAMDが今持てる技術の粋を集めて完成した、圧倒的なハイスペックCPUです。大幅なスペックの向上に利用するサーバーの台数を減らせることで、導入コストの削減はもちろん、電力消費量の減少によるCO2削減など、サステナビリティ(持続可能性)への取り組みにもつながります。

サーバーの導入やリプレイスの際にはぜひ選択肢に含めていただきたいと思います。

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