日本AMD AMDの最新64ビットプロセッサーがサーバーとPCの価格性能比を高める Zen 3マイクロアーキテクチャー搭載 「EPYC/Ryzen 5000」の先進性
2022-04-07更新
※この記事は2022年3月に週刊BCNに掲出した記事の転載です。
サーバーでもPCでも高パフォーマンスで低消費電力――。Zen 3マイクロアーキテクチャーを搭載したAMD 64ビットプロセッサーはテレワーク時代の市場ニーズにどのように応えるのか。日本ヒューレット・パッカード(HPE)サーバー製品本部ビジネス開発部の阿部敬則部長と深澤忠寿主任、日本AMDコマーシャル営業本部セールスエンジニアリング担当の関根正人マネージャーの3人が語り合った。
VDIを快適に使ってもらうには コア数が多いプロセッサーが有利
――この1~2年でテレワークは日本の社会にすっかり定着しました。
深澤 テレワークは、もともと2017年3月の「働き方改革実行計画」で提唱された柔軟な働き方でした。それが、20年に新型コロナウイルス感染症の大流行を機に広く実践されるようになり、今ではマスト(必需品)となっています。
深澤忠寿
日本ヒューレット・パッカード
サーバー製品本部ビジネス開発部主任
関根 東京オリンピックが決まった頃から経済産業省が推奨していましたので、「これはくるだろうな」と思っていました。この流れは当分変わらないだろうとみています。
関根正人
日本AMD
コマーシャル営業本部
セールスエンジニアリング担当マネージャ
――テレワークにはいろいろな実現方法があると思いますが、今の主流は何ですか。
深澤 サーバー側では仮想デスクトップ基盤(VDI)の採用が主流です。以前は高いセキュリティレベルを求めるケースで採用されることが多かったのですが、現在は地方自治体をはじめ小規模環境でも採用されています。
阿部 当社のお客様では、例えばオリンパスメディカルシステムズ様やKDDIウェブコミュニケーションズ様などが「HPE SimpliVity 325 Gen10」を使ったVDIシステムを構築されている事例があります。(※1)
深澤忠寿
日本ヒューレット・パッカード
サーバー製品本部ビジネス開発部主任
――ユーザーにVDIを快適に使ってもらうにはどのような注意が必要ですか。
深澤 VDIでは多数のユーザーを1台のサーバーに集約することになりますので、サーバーの性能、特にコア数がものをいいます。ただ、コストとのバランスを取る必要がありますから、サイジングは入念にしなければなりません。
阿部 VDIはサーバーのリソースを複数のユーザーが共有する仕組みですから、共有リソースの逼迫を招きやすいという弱点を持っています。この弱みをカバーするには、プロセッサーについては、少しでもコア数が多いものを採用するべきでしょう。
サーバー用のEPYCでは最大64コア 価格も現実的で互換性の懸念なし
――市場ニーズに応えるため、AMDではどのようなプロセッサーを作られていますか。
関根 AMDは多額の投資をして全く新しいマイクロアーキテクチャーを設計・開発し、17年に「Zen」として発表しました。Zenではコアコンプレックス(CCX)と呼ばれるモジュールに複数のコアとL3キャッシュを統合する構造が採用されていて、最新のZen 3で8コアを1チップに載せられます。さらに、CPUをマルチチップ化することによって、現状では8チップで64コア構成とすることができます。
――そのZenはサーバーCPUにも採用されているのですね。
関根 Zenを発表したのと同じ年にリリースした「EPYC」がZenを搭載したサーバー用CPUのブランドです。最新のEPYCはZen 3ベースになっていて、最大64コア。製造ルール(線幅)が7nmの微細加工技術によってより多くのトランジスターをダイに集積していますので、これだけのメニーコアを現実的な価格でお客様に提供できるようになりました。VDIでお使いになる場合は、それだけ多くのユーザーを1台のサーバーに統合できるわけです。
――64ビットプロセッサーを作っているメーカーは複数ありますが、サーバー買い替えなどの際に互換性についての注意は必要ですか。
関根 まず申し上げておきたいのが、現在のLinuxとWindowsの64ビットOSはAMDの命令セットに準拠しているということです。ですから、コードが動かないということはまずありません。ただし、物理環境の違いは意識する必要があります。仮想システムの場合、他社CPU用に作成した仮想マシンはコールドマイグレーションで移行してください。
EPYC搭載サーバー販売パートナーが集う HPE×AMDパートナー倶楽部を創設
――コア数が多いEPYCを搭載したサーバーを広めるために、両社はどのようなことに取り組んでいますか。
阿部 HPEはAMDと共同でEPYCを設計し、EPYCを搭載したサーバーを数多くリリースしてきました。コストパフォーマンスの高いEPYCを搭載したサーバーを多くのお客様にお届けするため、2020年6月に「HPE×AMDパートナー倶楽部」というパートナー様のためのコミュニティを立ち上げました。
――HPE×AMDパートナーにはどのような企業が参加できるのですか。
阿部 当社とパートナー契約を結ばれている企業であれば、規模や取扱高は問いません。すでに150社以上のパートナー様にご参加いただいていますが、ディストリビューター、SIer、リセラーと、プロファイルはさまざまです。
――メンバーになると、どのようなメリットがありますか。
深澤 検証機を無償でお貸しし、技術支援の専用窓口を用意しています。また、四半期に1回は情報提供セミナーを開催して、HPEおよびAMDの最新情報も提供しています。このほか、導入事例や販売事例も紹介していますし、メンバー企業が自社イベントを開催される際は講師派遣や後援で協力させていただくこともあります。今後、リファレンス構成も作成するつもりです。
阿部 メンバー様向けにご提供させて頂いているCPU置き換えリストはとてもご好評をいただいております。
関根 当社からも各種資料を提供しますし、セミナーなどで登壇させていただくこともあります。
深澤 加入後ご希望をいただければ、当社のWebサイト(※2)に企業名とURLを掲載することができます。掲載は地域別ですので、EPYC搭載サーバーの話を聞いてみたいと思われた見込み客の方が地元の販売パートナー様を素早く探せるようになっています。
Zen 3を積んだPC用AMD Ryzen™ 5000シリーズは高パフォーマンスでも低消費電力
このように圧倒的な強みを持つZenマイクロアーキテクチャーを武器に、AMDのビジネスは急拡大を続けている。22年2月1日に発表した同社のIRレポート(※3)によれば、21年度(21年1~12月)の総売上高は164億米ドル。前年比68%増に達する。
この快進撃には、サーバー用プロセッサーのEPYCだけでなく、PC用プロセッサーのRyzenも大きく寄与している。
Ryzenが市場から支持されているのは、テレワークへの需要が世界各国で高まっているためだ。
「かつてのモバイルPCは持ち運び性重視の設計になっており、筐体のサイズ・質量の小ささとバッテリライフの長さで勝負していた」と関根マネージャー。ところが働き方改革やパンデミック対策としてのテレワークでは、Microsoft TeamsやZoomを使ったWeb会議の比重が大幅にアップ。「2画面表示にして、片方でWeb会議をしながら、その横でDBアプリを動かしたり動画付きプレゼンテーションを視聴したりするのが当たり前になった」と関根マネージャーはいう。つまり、在宅勤務で使うモバイルPCにはデスクトップPC並みのパフォーマンスが求められているのである。
このような市場ニーズに応えるために、AMDは21年6月にAMD Ryzen 5000シリーズ・プロセッサーを発表した。設計の主目標は三つ。「可能な限り多くの物理コアとスレッド」「より多くのGPUリソース」「薄型モバイルPCに適する省電力性能」だ。
これまでのZen 3マイクロアーキテクチャーと同様、製造プロセスは7nm。多くのトランジスターを集積することによって、モバイルPCに許される15Wの熱設計電力(TDP)の枠内で1チップに最大8コアを搭載している。
その結果、AMDが社内で実施したテストによれば、AMD Ryzen 5 5600UはIntel Core i5-1135G7と比べて、Cinebenchマルチスレッドで90%増、Microsoft Office使用でも8%増の高パフォーマンス。コア数の差(AMD Ryzen 5 5600Uは6コア、Intel Core i5-1135G7は4コア)があるので当然ではあるのだが、性能の違いは歴然としている。
この快進撃には、サーバー用プロセッサーのEPYCだけでなく、PC用プロセッサーのRyzenも大きく寄与している。
Ryzenが市場から支持されているのは、テレワークへの需要が世界各国で高まっているためだ。
「かつてのモバイルPCは持ち運び性重視の設計になっており、筐体のサイズ・質量の小ささとバッテリライフの長さで勝負していた」と関根マネージャー。ところが働き方改革やパンデミック対策としてのテレワークでは、Microsoft TeamsやZoomを使ったWeb会議の比重が大幅にアップ。「2画面表示にして、片方でWeb会議をしながら、その横でDBアプリを動かしたり動画付きプレゼンテーションを視聴したりするのが当たり前になった」と関根マネージャーはいう。つまり、在宅勤務で使うモバイルPCにはデスクトップPC並みのパフォーマンスが求められているのである。
このような市場ニーズに応えるために、AMDは21年6月にAMD Ryzen 5000シリーズ・プロセッサーを発表した。設計の主目標は三つ。「可能な限り多くの物理コアとスレッド」「より多くのGPUリソース」「薄型モバイルPCに適する省電力性能」だ。
これまでのZen 3マイクロアーキテクチャーと同様、製造プロセスは7nm。多くのトランジスターを集積することによって、モバイルPCに許される15Wの熱設計電力(TDP)の枠内で1チップに最大8コアを搭載している。
その結果、AMDが社内で実施したテストによれば、AMD Ryzen 5 5600UはIntel Core i5-1135G7と比べて、Cinebenchマルチスレッドで90%増、Microsoft Office使用でも8%増の高パフォーマンス。コア数の差(AMD Ryzen 5 5600Uは6コア、Intel Core i5-1135G7は4コア)があるので当然ではあるのだが、性能の違いは歴然としている。
あわせて、省電力性能も強化されている。「1代前のAMD Ryzen 4000シリーズからAMD Ryzen 5000シリーズへの設計変更の際に、アイドル時の積極的な電源オフ機能をさまざまな回路に取り入れた」と関根マネージャー。CPU、GPU、ビデオデコード・エンコードなどのマルチメディア系エンジン、ディスプレイコントローラー、各種インターフェースのそれぞれで節電することにより、バッテリライフはAMD Ryzen 4000シリーズ対比で約20%伸びているという。
このような特徴を持つRyzenシリーズの主なターゲットは、法人向けのモバイルPC。関根マネージャーは「セキュリティが強化されたAMD Ryzen PRO プロセッサー搭載PCはテレワークに最適で、ぜひディストリビューターやリセラー様の皆様に拡販していただきたい」と語る。
8コアのAMD Ryzen™ 5000シリーズが可能にした高性能のHP Probook 635 Aero G8
日本HPが21年11月に販売を開始した「HP Probook 635 Aero G8」は、軽さ、強さ、速さを兼ね備えた注目のモバイルPCだ。
画面サイズは13.3インチ(縦横比16:9)で、本体は17.9mmの薄さ。質量は999g(最軽量時、構成によって相違)と軽く、持ち運びしやすいデザインになっている。シャーシーはマグネシウム塊からの削り出し、外板は耐食性・耐摩耗性が高いアルマイトになっているから、耐久性も抜群。MIL-STD-810H(米軍調達基準)およびHPI独自のテストをパスしている。LTEモデル以外は「東京ファクトリー&ロジスティックスパーク」での製造(Made in Tokyo)なので、多くの企業の調達基準に合致するはずだ。
それでいて、HP Probook 635 Aero G8はハイブリッドワークをこなすのに十分なパフォーマンスも備えている。
搭載されているCPUは、最大8コアを内蔵した最新のAMD Ryzen 5000シリーズ。マルチタスクや高負荷処理に強いので、プロセッサーのリソースを大量に消費することで知られるMicrosoft TeamsやZoomも快適に使用できることだろう。バッテリには、充放電サイクルが約1000回の高耐久性型を採用。バッテリライフは最大18.7時間(3セル・53Whバッテリ搭載/LTEモデル、JEITA測定法Ver.2.0)と長く、日帰り出張であれば途中で充電することなく仕事をこなせるだろう。
また、法人ユースを意識して、セキュリティにも十分な配慮が払われている。ハードウェアによる物理セキュリティとしては、レジリエンスチップ「HP Endpoint Security Controller」を標準搭載。ソフトウェア方式のものを含めると、HP Sure Start(BIOS検査&自己回復)、HP Sure Run(システム重要設定の維持)、HP Sure Recover(自動リカバリー)、HP Sure Click(マルウェア対策)、HP Sure Sense(AI方式マルウェア検知)などの機能が利用できる。ログイン認証は、Windows Hello準拠の生体認証(指紋、顔画像)で行う方式。内蔵カメラにはスライド式のプライバシーシャッターが組み込まれているので、突然のWeb会議でもオフィスや自宅の様子を不用意にさらしてしまうことはない。
製造と同様、サポートと保守も全て国内での対応になっている。保守拠点は全国に420カ所以上。オプションの保守サービス「HP CarePack」に加入すれば、「保証期間の延長」「水漏れ・落下・衝撃・電圧異常・盗難などの偶発的事故もカバーするアクシデントサポート」「ワンタイム内蔵バッテリー交換サービス」なども利用可能だ。
(※1)https://www.hpe.com/jp/ja/solutions/amd.html#casestudies
(※2)https://www.hpe.com/jp/ja/solutions/amd-partner.html
(※3)https://ir.amd.com/financial-information/
AMDプロセッサー搭載サーバー及びクライアントPCへのご興味についてのアンケート(外部サイト)
https://www.seminar-reg.jp/bcn/survey_amd_hpe/