導入事例 -【ORCA3D】AMD Ryzen™ Threadripper™ PROがもたらす船舶設計の未来

AMD Ryzen™ Threadripper™ PRO プロセッサー 事例

2023-09-27更新

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AMD プロセッサーによって船舶設計の未来を推進する Orca3D と Simerics

AMD Ryzen™ Threadripper™ PRO プロセッサーは、ユニークなメモリー・アーキテクチャーとコアあたりのハイスピード・パフォーマンスを備えているため、船舶設計の中核を担う広範なユーザーを支援します。

【概要】
業界:海洋構造物設計・分析
課題:非専門家のユーザーに魅力的なパ フォーマンスと価格オプションで、誰もが扱える高度な船舶設計・解析ソ フトウェア・パッケージを作成する
解決策:AMD Ryzen™ Threadripper™ PRO プロ セッサーが備える 8 つのメモリー・ チャネルへの高速アクセスとスレッ ド・ピンニングのスクリプトを活用 して、複雑な演算処理を遅らせるボ トルネックを排除する
結果:Orca3D™ Marine CFD は同等な価格帯 の x86 ベースソリューションと比較 して、63% の演算パフォーマンス向 上を達成
お客様の声:「AMD Ryzen™ Threadripper™ PRO は、同等な価格帯の x86プロセッサーと比較して、即座に23%のパフォーマンス向上を実現してくれました。」
Orca3D, LLC パートナー、ブルース・ヘイズ(Bruce Hays)氏
「当社のソフトウェアのスレッドピンニング・スクリプトは、AMD の支援を受けて開発したもので、広範なお客様をサポートする柔軟性とスケーラビリティが得られ、ランタイムとコストの適切なバランスをとるために役立っています」
Simerics Inc エグゼクティブ・バイスプレジデント、リッチ・ムーア(Rich Moore)氏
AMDテクノロジー概要: AMD Ryzen™ Threadripper™ PRO プロセッサー


12 ヶ月前、アンドリュー・アダムソン(Andrew Adamson)は、地元のニュージーランド海岸沖で、悪天候の中双胴船を操舵中に、エンジンの騒音を削減し、操縦性を改良する方法を思いつきました。陸に上がった後、Adamson は、新たな船舶設計の草案に取り掛かりました。ただし、Adamson は、プロの船舶設計士の資格を持っているわけではありません。Adamson は、『シュレック』や『ナルニア国物語』などAcademy Award® を受賞した映画監督として有名です。

この新たな電動ヨットを実現するために、Adamson は、この船舶設計がどのように機能するかをテストする必要がありました。コンピューター・エンスージアストの情熱を秘めた Adamson はまもなく、AMD Ryzen™ Threadripper™ PRO 3975WX テクノロジーを活用して、ハイパフォーマンス・コンピューターによる数値流体力学というプロフェッショナルの世界を自分のデスクトップに落とし込むための過程を歩むことになります。

造船の歴史上、船舶設計のテストには、縮尺モデルの構築や曳航水槽内での試験があり、これらは何ヶ月もの時間と労力を要する高コストのプロセスです。Andrew は研究を進める中で、Orca3D のパートナーであるブルース・ヘイズ(Bruce Hays)氏と出会いました。同社は、船体形状の設計や安定性の解析に使用される Orca3D™ 船舶設計ソフトウェアのメーカーです。

Hays 氏は、「進化的ではなく、これまでにない画期的な船舶を設計しようとする場合、正確な数値が必要です。縮尺モデルのテストは高コストで、時間がかかり、縮尺の問題が発生するため、現在は、数値流体力学 (CFD) ソフトウェアの使用が増えています」 と説明します。

船舶設計と数値流体力学の融合

CFD 機能に対する需要の高まりは、Orca3D と Simerics の提携に現れています。Simerics はSimerics-MP® と呼ばれる最先端の CFD 解析プラットフォームの開発企業です。

両社は協力して、Orca3D™ Marine CFD と呼ばれるソリューションを開発しました。Simerics Inc. のエグゼクティブ・バイスプレジデントであるリッチ・ムーア(Rich Moore)氏、「従来、CFD は専門家だけが扱える領域でした。しかし、博士号を持っている CFD の専門家ではなくても、安心して使用できるシステムを私たちは作成しました」と述べています。

このソフトウェア・スイートは3つの要素から構成されています。Rhino® は、汎用 3D モデリングのソフトウェア・パッケージです。Orca3D は、Rhino に船舶専用の設計・解析ツールを追加するプラグインです。Simerics-MP CFD は海洋テンプレートによって、CFD シミュレーション機能を提供します。

専門家は通常、ハイパフォーマンス・コンピューターまたはクラウド・コンピューティングのクラスターを使用します。しかし、これらは非常にコストが高く、Adamson のように、個人のデスクトップ上で実行できるものを必要とするユーザーには現実的ではありません。Moore 氏は「あらゆる設計士、造船技師、熱心なコンシューマーが使用できるソフトウェア・パッケージを作成するためのソリューションには、簡単で、信頼性が高く、そして何よりも、高速であることが求められました」 と述べています。

現状を打破する

CFD のワークロードには、大量の演算タスクを処理できる CPU が必要です。2021年初め、Orca3DSimerics の開発チームは、AMD Ryzen™ Threadripper™ PRO プロセッサーのテストを開始しました。Hays 氏は、「AMD Ryzen™ Threadripper™ PRO は、同等な価格帯の x86 プロセッサーと比較して、即座に 23% のパフォーマンス向上を実現してくれました」と述べています。ところが、これは始まりにすぎず、Adamson のプロジェクトは、研究をさらに深く掘り下げる原動力になりました。

Adamson の設計は、地方の港で目にするような従来の船舶ではありません。彼のユニークな船型設計は、波に対する船舶の反作用を大幅に削減し、非常に安定するように最適化されています。問題は、このような設計が巡航速度で効率が落ちる可能性があり、電気推進船の要件と相反していたことです。

この問題を解決するため、Adamson は、水中から双胴を持ち上げ、抵抗を削減するフォイルを設計しました。飛行機のように、制御面が船舶を「浮かす」必要があります。これらの制御面のモデリングは、形状や海面状態が常に変化するため、複雑な演算問題です。

AMD Ryzen™ Threadripper™ PRO で隠された可能性を解放

「イテレーションを迅速に完了できる能力が重要になりました。私はたくさんのアイデアを持っていて、あらゆるイノベーションは新しい試みでした」と Adamson は説明します。そこから、ソフトウェアチームのスピードと効率向上の探求が始まりました。32 コアと 64 スレッドを搭載する AMD Ryzen™ Threadripper™ PRO 3975WX を使用することで、Andrew のシステムは、必要なパフォーマンスを実現することができました。さらに高いパフォーマンスが必要な場合には、AMD Ryzen™ Threadripper™ PRO 3000 WX シリーズ CPU は最大 64 コアと 128 スレッドで利用可能です。

Hays 氏は、「AMD Ryzen™ Threadripper™ PRO プラットフォーム上では 8 つのメモリー・チャネルが利用可能であるため、デュアルまたはクワッド・メモリー・チャネルの CPU に比べて非常に大きいメリットがあるとわかりました。世界中のコアをすべて利用できるとしても、演算処理がメモリーを待機しなければならないとしたら、スピードが落ちてしまいます」と説明します。

AMD Ryzen™ Threadripper™ PRO プラットフォームは、「チップレット」を中心に設計され、1つのチップレットは8つのコアのセットで、専用の L3 キャッシュを搭載し、8 つのメモリー・チャネルへの高速アクセスを実現します。Windows にプロセッサーの割り当てを許可した場合、複数のチップレットにわたって移動する傾向があります。AMD が推奨したスレッドピンニング・アプローチを利用すると、デベロッパーがプロセスの割り当てを最適化して、キャッシュの効率的な使用とメモリーへ最速のアクセスを確実に行うことができます。AMD のソフトウェア・パフォーマンス・チームと協力して、Orca3D と Simerics はスクリプトと BIOS オプションを最適化し、最大 63% のさらなるパフォーマンス向上を達成しました。 Moore 氏は「AMD Ryzen™ Threadripper™ PRO と Orca3D Marine CFD を組み合わせた結果、市場のどのソフトウェアよりも明らかにスピードがアップしたと言うことです」と述べています。

お客様に柔軟なソリューションを提供

「お客様の予算やニーズは様々であるため、AMD Ryzen™ Threadripper™ PRO ファミリーが提供する 16 コアから 64 コアまでの幅広いオプションは非常に重要です。当社のソフトウェアのスレッドピンニング・スクリプトは、AMD の支援を受けて開発したもので、広範なお客様をサポートする柔軟性とスケーラビリティが得られ、ランタイムとコストの適切なバランスをとるために役立っています」

Adamson の 32 コア搭載システムは、ほとんど苦もなく制作ルーチンを達成できました。「毎日、私はシミュレーションを実行します。午前中、何を改良する必要があるかを確認してから、プロセスをもう一度始めます。私は適切な専門知識を持つことで、博士号がなくても誰よりも開発を進めることができました。システムのスピードによって、この試行錯誤するプロセスだけでなく、設計における自然な反復プロセスも可能になりました」

未来を見据えたスムーズな舵取り

Moore 氏は、「AMD ソフトウェア・パフォーマンス・チームのアドバイスは、Orca3D Marine CFD に適切なパラメータを決定する際に役立ちました。Andrew のプロジェクトに役立つ 1 回限りのソリューションではなく、ユーザーが各自の AMD Ryzen™ Threadripper™ PRO CPU 搭載システムで使用できる製品をもたらしてくれました。まもなく、お客様の特定のAMD Ryzen™ Threadripper™ PRO 構成を自動的に検出し、当社のソフトウェアを最適化するスクリプティングを利用して、お客様のシステムで最高のエクスペリエンスを提供できるようになります」と締めくくりました。

Adamson は、夢に見た船舶の建造が 2022年後半に始まることを待ち望んでいます。同時に、LOMOcean の有名な造船技師である別の Orca3D ユーザーとも協力して設計を改良し、商用アプリケーションへの開発を進めています。Adamson の希望は、自分の設計によって世界中の海洋で化石燃料の使用量が削減されることです。


【Orca3Dについて】
Orca3D, LLC は、Rhino® 環境向け船舶設計ソフトウェア・ツールの最先端開発企業として、世界中のリクリエーション、造船、商用海洋市場の何千人ものユーザーに製品を提供しています。造船所、設計企業、政府機関、教育機関をはじめとする幅広いお客様は、Orca3D が提供する、高速かつ正確で使いやすいソリューションと、迅速かつ徹底したテクニカル・ サポートに信頼を寄せています。30 年以上にわたって、当社の造船技師は、民生品ソフトウェア、カスタム・ソフトウェア・ソリューション、コンサルティング・サービスを世界中の海洋業界に提供しています。詳細については、orca3d.comをご覧ください。

【Simericsについて】
Simerics は米国ワシントン州ベルビューを拠点地とし、Simerics-MP、Simerics-MP+、Orca3D Marine CFD、Creo Flow Analysis、Simerics MP for Fusion、Rhino Flow-RT、CFTurbo SMP をはじめとする主要シミュレーション・ソフトウェアを開発しています。Simerics とそのパートナーは、以下の複数のバーティカル業界にサービスを提供しています:海洋、自動車、航空宇宙、ポンプ、バルブ、コンプレッサー、熱交換器、電子、電子自動車、タービン、石油ガス、CFD シミュレーション。詳細については、rich.moore@simerics.com までご連絡ください。またはwww.simerics.comをご覧ください。

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脚注:
すべてのパフォーマンスおよびコスト削減効果の記載は、Orca3D および Simerics により提供されたもので、AMD が独自に検証したものではありません。パフォーマンスとコスト削減のメリットは、さまざまな不確定要素による影響を受けます。ここに記載されている結果は、Orca3D および Simerics に固有のものであり、一般的なものではありません。GD-181
©2023 Advanced Micro Devices, Inc. All rights reserved. AMD、AMD Arrow ロゴ、Ryzen、Threadripper、およびその組み合わせは、Advanced Micro Devices, Inc. の商標です。Academy Awards は Academy of Motion Picture Arts and Sciences の登録商標およびサービスマークです。Orca3D および Orca3D Marine CFD は Orca3D, LLC の商標です。Rhino は TLM, Inc. の登録商標で、Robert McNeel & Associates の名前で商取引を行っています。Simerics および Simerics-MP は Simerics, Inc. の登録商標です。本ドキュメントに使用されているその他の名称は識別目的のみに使用されており、所有する各企業の商標である場合があります。

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