AMD 「Zen 4」のアーキテクチャーは、5nm! PCのスペックや電力効率に影響するプロセスルールとは?

AMD Ryzen™ PROプロセッサー

2023-03-31更新

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業務で使用するビジネスPCにおいて、性能や電力効率は重要です。この性能や電力効率に関して、重要な影響を与えているのが、「プロセスルール」と呼ばれるもの。「ルール」と呼ぶので何か法則のようなものを想像しがちですが、実際にはCPU内の配線の太さのことを指します。この配線が細ければ、基本的にはより細かな設計ができますし、電気が通る幅も狭まるので、効率もよくなります。本記事ではプロセスルールの基礎を紹介します。今後、新たなPCを導入する際などビジネスPCのスペックを見るときに参考になれば幸いです。

プロセスルールって何? PC選びにどう影響する?

PCを選ぶ際にスペック表を見てみると、「◯◯nm(ナノメートル)プロセスルールのCPU搭載」といった文言が目につくことがあるでしょう。いったいこのプロセスルールとは何を指しているでしょうか?実は、プロセスルールはPCを選ぶ際の指標の一つになるほど、重要なものなのです。

プロセスルールとは簡単に言えば配線の太さ

プロセスルールを簡単に言うと、CPUを設計通りに配線するときに使用する配線の太さです。CPUメーカーはまず設計図を作成する必要があり、その設計図には数十億個を超える膨大な数の回路パターンが記されています。設計図が完成すると、設計図にあるパターンと同じようにCPUを製造していきます。現在はレーザー鉛筆を使って回路パターンを描いています。こうして使用されるレーザー鉛筆の先端のサイズをプロセスルールと呼びます。レーザー鉛筆の先端が細い配線が細くなるため、より細かい設計と製造ができるというわけです。

プロセスが小さければより細かい設計が可能となり電力効率が上がる

先ほども述べたように、プロセスルールは小さければ小さいほど細かな設計が可能になります。このようにプロセスルールを微細化することで、主に2つのメリットがあります。

1つ目は、同じチップ面積でより大量の半導体でできたトランジスターを載せることができます。CPUの設計図に描かれ回路パターンは、トランジスターの配置情報です。したがってトランジスターが多いほどCPUの処理能力も高くなりますが、その分必要なチップ面積も大きくなります。そこでプロセスルールが小さいと、同じ面積に描くことができるトランジスターが多くなり、CPUの性能が高くなります。

また2つ目は、消費電力を減らすことができます。トランジスターは電気が通っているオンの状態と電気が通っていないオフの状態を繰り返していて、これをスイッチングと言います。トランジスターが大きいほどスイッチングに時間がかかり、余計な電力を消費してしまいます。しかしプロセスルールの微細化によりトランジスターが小さくなったことで、スイッチングにかかる時間が減り、電力効率が上がりました。

1nmは、およそ髪の毛の太さの10万分の1程度!

1nmは、1mの10億分の1の大きさです。身近なものに例えると、髪の毛の太さの10万分の1程度。想像すると気が遠くなるほど細く小さいサイズです。

プロセスルールは時を経てだんだん小さくなってきています。1978年に登場した初代8086は3000nmでしたが、2008年に登場したCore 2 Duoシリーズは45nmと30年間で約67分の1に縮小されています。

ムーアの法則に先んじて開発を進めたAMD

shigeru23, CC BY-SA 3.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0>, ウィキメディア・コモンズ経由で

半導体のトランジスターを語る上で欠かせないのが「ムーアの法則」です。これは「半導体のトランジスター集積率は18ヶ月で2倍になる」というもの。半導体の開発速度を予測した法則で、intelの共同創業者であるゴードン・ムーアが1965年にアメリカの雑誌で発表しました。

「18ヶ月で2倍」という成長率は、10年は続くだろうと予想されていましたが、実際はそれから約50年が経った2010年代後半までムーアの法則に準じた速度で半導体の開発が進み続けました。また、その中で上の表のAMD K8やK10のように、AMDがムーアの法則を超越した速度で開発しているのは見逃せない点です。

しかし2010年代後半から半導体の開発速度が鈍化し始めました。その背景としては、開発費用や設備投資費用の高騰に加えて、半導体がすでに原子レベルまで微細化を繰り返したことなどの物理的な要因が挙げられます。そこでAMDは、それまで自社で賄っていた半導体の製造事業を半導体専用ファウンドリーへと移すというファブ(工場)レスに踏み切りました。また自社では「チップレット」を活用した新たなアプローチを試み、     従来のものと比べて高性能なプロセッサーをより短期間で生産できるようになりました。AMDはムーアの法則の進化を牽引しており、市場での存在感を示しています。 

「Zen4」は5nmのプロセスルールを搭載

参照元:AMD Corporate Presentation – October 2022(https://library.amd.com/media/?mediaId=D7B5E75F-1462-4CC7-A58A4B7912819DF9

AMDは「AMD Ryzen™  7040 シリーズ・ プロセッサー」に「Zen 4」を採用しました。Zen 4はCPU内蔵キャッシュの強化やCPUコアの改良によって、1クロックあたりの処理性能が上がるなどPCのパフォーマンスが向上しました。

また最も評価すべき点は、このZen 4は4nmのプロセスルールで製造されていることです。

プロセスルールの細線化の歴史を遡ってみると、最も古い半導体製品は10.0μm(10000nm)であったことから、Zen 4がいかに細線化されているかが分かるでしょう。

またAMDは、「Financial Analyst Day 2022」、2024年末までの AMD Ryzen™ シリーズのロードマップを公開し、Zen 5世代となる 次世代のAMD Ryzen シリーズ・プロセッサーを投入することを発表しました。このZen 5は、4nmまたは3nmのプロセスルールで製造される予定で、さらに2nmプロセスの量産に向けた研究開発も行っており、今後もプロセスルールの細線化が進むことが期待されています。

一方、AMDのライバルの半導体メーカーであるIntelは、2021年7月26日午後(米国時間)に行ったオンライン会見で、新しい製造技術のロードマップを公開し、今後4〜5年の間に5世代のプロセスルールを投入するとし、2025年には性能面でのリーダーになると宣言しました。

しかしIntelの製品は現在10nmのプロセスルールで設計されており、現時点で発表されている、2023年中に登場予定の一般向けIntel CPU「Meteor Lake」でも7nmに留まっています。つまり現時点で最も微細な半導体チップを製造しているメーカーはAMDであることが分かります。

プロセスルールが小さければより複雑な回路が実現できる

このようにプロセスルールとは、半導体回路の配線の幅のことを指します。プロセスルールが小さければ小さいほど、複雑な回路を実現することができます。半導体の進化はプロセスルールの縮小によって支えられてきました。微細化が進むことで、高機能化や省電力化などのメリットが期待できるからです。したがって、より小さいプロセスルールで製造されたCPUやメモリーなどの半導体製品ほど高性能であるということです。しかしメーカーによってプロセスルールのサイズ感は異なります。

実際にビジネスPCを検討する際は、プロセスルールの大きさに着目してみると、より性能が優れたPCを選ぶことができるでしょう。

脚注:ページ内にある第三者のサイトへのリンクは便宜上提供されているものであり、明示されていない限り、AMDはそのようなリンク先のサイトのコンテンツについて責任を負わず、いかなる推奨も示唆しておりません。GD-97

 

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