高まるキャッシュレス需要に決済システムの低コスト化で応える

AMD EPYC™ プロセッサー HPC

2021-04-09更新

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※この記事は2021年3月に日経クロステックに掲出した記事の転載です。

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加速するDXの中で、キャッシュレス化は待ったなしと言われる一方、コスト面などの課題から、いまだに着手できていない中小規模の小売業者は少なくない。こうした層にもより応えていくべく、NTTデータの金融・決済IT分野の中核を担うNTTデータ・フィナンシャルコアは、今後も高まるトランザクション(取引)量に応える性能と信頼性を保ちながら、コストを抑えた決済システムの構築に着手した。同社の吉澤稔氏に詳細を聞いた。

キャッシュレス決済の利用は加速度的に伸びている。経済産業省によると、キャッシュレスの決済比率は2019年には26.8%に達しており、2025年までに40%前後にまで高まることが期待されている。キャッシュレス化によって消費者は買い物の利便性が高まり、店舗側としてもレジ締め作業の短縮化などが図れる。顧客と店員の接触を減らせるため感染症対策の一助となり、日本の通貨に不慣れな訪日外国人にとっても利便性は高い。

電子マネーやクレジットカードを使用した際に、見えないところで動いているのが「決済システム」だ。金銭としての価値を持った情報を、漏れや矛盾なく、かつ速やかに支払い者から受け取り者へと移動させる役割を受け持つ。

そうしたシステムの構築や運用を手掛けているのがNTTデータ・フィナンシャルコアだ。同社はこれら決済システムの他、金融機関の預金・融資・為替などに関する「基幹システム」も含めた2領域における開発・設計を網羅し、大規模なプラットフォーム開発から中小規模向けの独自システムの設計まで、日本のインフラを支える多様な金融システムの中核を担ってきた。

NTTデータ・フィナンシャルコア第四事業部 課長代理 吉澤 稔氏
NTTデータ・フィナンシャルコア
第四事業部 課長代理
吉澤 稔氏

同社が手掛ける決済システムの1つに、全国津々浦々の加盟店店舗で利用できる電子マネーがある。2020年時点での利用可能店舗は全国で1000店以上あり、年間のトランザクション量は同社が手掛ける様々な決済システムの中でも最大級の規模を誇る。

今後は、さらに増加するトランザクション量への対応が求められている。一方で、競合他社の市場参入などもあり、従来の決済システムに上乗せしていくのではコストがかさみ過ぎてしまう状況にあった。こうした課題に応えるべく始動したのが、新しい決済システムの開発だった。

新たな決済システム開発に必要な相反する3つの要件

新たな決済システムの開発に当たっては、大きく3つの要件が課せられたとNTTデータ・フィナンシャルコアの吉澤稔氏は説明する。「まず、24時間止まらない高い可用性が求められました。また最大の目的であるトランザクション性能を、従来システムの数倍にまで高める必要がありました。さらに、加盟店が決済サービスを安価に利用できるように、システムの構築コストおよび運用コストをできるだけ抑えることが求められました」。

可用性はサーバーの冗長化やデータセンターの分散化などで対応できる。それよりも大きな課題は、性能を高めつつコストを抑えるという相反する要件をいかに満たすかだった。数年に及ぶ検討や実機検証を経て、その信頼性を見込んで選択したのが、第2世代AMD EPYC™ プロセッサー(コードネーム「Rome」)を搭載したシングルソケットのサーバーだった。

第2世代AMD EPYC™ プロセッサー 画像
第2世代AMD EPYC™ プロセッサー

「採用の理由は大きく2つです。ハイパーバイザー上で小規模なVMやコンテナを多数扱う当社のインフラアーキテクチャーと、EPYC™のマルチダイアーキテクチャーの相性がとてもマッチしており、シングルソケット構成にしても従来のデュアルソケット構成と同等の集約率が得られる見込みがありました。そしてその結果、サーバー構成がシンプルになり、かつソケット数に応じて設定されているサーバー向けソフトウエアのライセンス料を大幅に抑えられると考えたからです」(吉澤氏)

AMD EPYC™のロードマップ

AMD EPYC™のロードマップ 画像
「Rome」は、AMDのEPYC™ プロセッサーとして第2世代に当たる。14nmプロセスのI/Oダイの周囲に7nmプロセスのCPUダイを複数配置するチップレット・アーキテクチャーを採用し、DDR4やPCIeなどのI/O系と、L2キャッシュおよびL3キャッシュを含むCPU系でそれぞれ最適化を図ることで高性能化を実現。製品は8コアから64コアまでラインアップされている。なお2021年3月にはZen 3アーキテクチャーに基づく第3世代AMD EPYC™ プロセッサー(コードネーム「Milan」)が発表された。CPUコアの動作周波数が最大200MHz高められていている。

従来比7倍のトランザクション量にも対応

電子マネー決済システムは、店舗とのインターフェースとなるWebサーバー、決済処理などを行うアプリケーション(AP)サーバー、および決済情報を格納するデータベース(DB)サーバーの3-tier(3層)で構成される。

小売店舗向け電子マネー決済システムの構成概要

小売店舗向け電子マネー決済システムの構成概要 画像
「Rome」は、AMDのEPYC™ プロセッサーとして第2世代に当たる。14nmプロセスのI/Oダイの周囲に7nmプロセスのCPUダイを複数配置するチップレット・アーキテクチャーを採用し、DDR4やPCIeなどのI/O系と、L2キャッシュおよびL3キャッシュを含むCPU系でそれぞれ最適化を図ることで高性能化を実現。製品は8コアから64コアまでラインアップされている。なお2021年3月にはZen 3アーキテクチャーに基づく第3世代AMD EPYC™ プロセッサー(コードネーム「Milan」)が発表された。CPUコアの動作周波数が最大200MHz高められていている。

このうち、WebサーバーとAPサーバーは、32コアの第2世代AMD EPYC™ プロセッサーを搭載したシングルソケットサーバーを複数台並べて、ハイパーバイザーを使って構築した仮想マシン上に実装している。「ハイパーバイザーのライセンス料はプロセッサー数に応じます。そのためシングルソケットプロセッサーなら、他社のデュアルソケットプロセッサーに比べて、単純に半額に抑えることができました」と吉澤氏は説明する。

性能面では2020年のトランザクション量のおよそ3.5倍を処理できるように設計された。将来トランザクション量が増加したときは、物理サーバーを増設して全体の仮想マシン数を増やして対応する計画だ。

一方のDBサーバーには、8コアの第2世代AMD EPYC™ プロセッサーを搭載したシングルソケットサーバーを採用。性能の主なボトルネックはI/Oにあるため、コア数は最小の8にしてデータベースのライセンス料を抑えようという構えだ。

DBサーバー部分は2020年のトランザクション量に対しておよそ7倍の性能余裕を持たせてあり、WebサーバーおよびAPサーバーのスケーラビリティーと合わせて、今後数年にわたって見込まれる電子マネーの利用増加や加盟店数の増加にも対応できる処理性能を実現しようとしている。

「まず、AMD EPYC™ プロセッサーを、システムを構成する上での信頼できる有力な選択肢として並べることで、おのずとメリットが具体化して見えてくるはずです。とくにシングルソケットによって、システムライフ全体のTCO(総所有コスト)の削減が実現できることは、当社にとってのメリットだけではなく、お客様やひいてはキャッシュレス社会への貢献に繋がると考えています。当社ではこのようなハードウエア・インフラ設計も含めたソリューション事業を積極的に拡大しようと計画しており、より良い物を低コストで皆さまへご提供していくために、AMD EPYC™ プロセッサーは今後も非常に有力な選択肢になっていくと考えています」と吉澤氏は述べている。

電子マネーは今や生活インフラの一部を構成している。AMDは、高性能なサーバー向けプロセッサーの提供を通じて、IT化社会の一翼を担っていく。

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